「髪切りたい」
突発的に美容室に行きたくなることが多々ある。
「多々」というか、ほとんど毎回そう思っている。
これが「来週末あたりで」といった「そろそろ」なんて悠長なものではなく、「今すぐ!」という熱量のものであるため、なかなか厄介だ。
しかも、ショートヘアであるが故に、その頻度はひと月に一度という結構なハイペースさである。
ただ、髪を切るのは好きだが、美容室に行くのはあまり得意ではない。
髪を切ってくださる美容師さんもそのお仕事もとても尊敬する。
ただ正直、髪を切ってもらう間の空気感、その空気感のなかで迷子になっている自分自身に戸惑ってしまう。
椅子に座ってカットが始まると、毎回、その感覚にぼんやりと包まれる。
最近、住む場所を変えた。
それによって、今まで通っていた美容室と泣く泣くお別れすることとなった。
遠くの町に移り住むことになったため、頻繁に地元の家族や友人に会えなくなるのは、やはり寂しさを感じた。
ただ、自分ももうそこそこいい大人であるため、そこらへんの気持ちの落としどころは、そう時間がかからず見つけることができた。
見つからないのは、「美容室」の方だ。
さて、どうしようか。
ありがたいことに、スマホに「近くの美容室 おすすめ」「〇〇市 美容室 ショートヘア」などと打ち込みさえすれば、画面にたくさんのお店がずらっとならぶ。
しかも、一体どこまでスクロールすればいいのかという、選びきれないほどの数のお店が一瞬で表示される。
たくさん選択肢があるのはありがたい。
ありがたいのだが、「もう少し絞ってくれませんかね」とも思う。この贅沢者め。
さて、ここからが本題。
「どのお店が自分にあっているのか」
お店の場所やコンセプト、お店やスタッフさんの雰囲気、お客さんの口コミなど。
とあるお店のページを開き、戻り、また別のページを開き、戻り、もう一度さっきのお店のページを開き、悩み、また別のページを開き、悩み、戻り、開き、悩み、悩み…
ブックマークをいくつ付けたのか自分でも分からなくなってきた頃、髪を切りたい熱も下火になっていることに気づく。
「とりあえず、決めるのはまた明日にしよう」
そして、いったん保留したにもかかわらず、その日の夜に髪を洗い、ドライヤーをしていると
「我慢ならん!」
と、またスマホを手に取る。いつもその繰り返しである。
引越してくる前は、ここ!と決めた店舗に10年近く通っていた。
そのお店は居心地がよく、なによりもいつも「いい感じ」に仕上げてくださっていたので、髪を切りに行くのを月に1回のご褒美のように感じていたほどだ。
新しい土地に引っ越して早1年。
いまだにしっくりくる美容室は見つかっていない。
ひと月に1回のペースで髪を切っているが、それでもなかなか見つからない。
星の数ほどお店があるのに…
正確には、しっくりくるお店が見つかりかけていたのだが、来店3回目となるタイミングでいつも担当してくれていた美容師さんが「私、再来月で退職するんです」と教えてくださった。
「やっとでたどり着いたのに…」
そんなこんなで、また美容室探しの旅が始まりそうです。
「今すぐなんとかしたい!」と髪をかき上げながら、今月もインターネットの海に漕ぎ出そうと思います。